発色剤(亜硝酸・硝酸)についての考察


歩人では、添加物名:発色剤(硝酸カリウム・亜硝酸ナトリウム)を使用していますが、亜硝酸ナトリウムには様々な問題点が指摘されています。
その為、一部の業者によって発色剤を使用しない無塩漬・無添加なる製品が製造・販売されていますが、発色剤を使用することの意味無塩漬の製品の危険性をご説明いたします。




 ハム・ソーセージ等の食肉加工において、本場ヨーロッパでは亜硝酸の働きは無くてはならない物とされています。そのため、亜硝酸ナトリウム、及び、時間の経過とともに亜硝酸に変化する硝酸カリウムの添加は常識になっています。意識的に添加し始めたのは近代のことでしょうが、両物質は食肉加工が始まった当初からその役割を担っていたことは間違いありません。

 食肉加工技術はヨーロッパの内陸地で発達したがゆえ、当然のことながら海塩ではなく岩塩の使用によって発達した技術です。岩塩には大量の硝酸塩が含まれており、塩漬けされた肉に浸透する過程で、硝酸還元菌によって硝酸塩が亜硝酸塩に変化してその役割を全うしてきました。しかし近代においては、管理された条件で必要最低量を添加することによって安全で美味しい加工品を作り出すことに成功しました。

 発色剤は着色剤とは違い、色を付けるのではなく肉の色を保持するためのもので、肉は加熱すると茶色になるにもかかわらずハム類は加熱しても赤いままなのはこのためです。しかし、この働きだけがクローズアップされて発色剤という添加物名が付けられていますが、本来の大切な亜硝酸の働きは別なところにあります。それは非常に致死率の高いボツリヌス菌に対する静菌作用と、肉の獣臭を独特の風味に変化させるメイキングフレーバーとしての働きで、食肉加工技術の中で欠かせないものです。無添加の豚臭いベーコンを食べたことのある人には分かっていただけると思います。

 反面、問題として亜硝酸塩とアミン(タンパク質が古くなって出来る)の化学反応によって生じる発ガン性物質であるニトロソアミンの問題が指摘されています。そのため古い歴史をもつ両物質が常に非難の的となっています。しかし本当はどうでしょうか。スーパーで売られている一般の食肉加工品ですら、野菜に比べれば亜硝酸の含有量は比較にならないほど微量であるのです。

 以下、微力ながら非難に対する弁明を、というよりもお客様にとって不利益となりかねない一部業者による作為的な誤解を解消いただけるように努力してみたいと思います。

注)硝酸塩および亜硝酸塩の活性はそれぞれ硝酸根・亜硝酸根にあるが、特別の場合を除いて硝酸塩(主としてKNO3)・亜硝酸塩(主としてNaNO2)と表現しました。


発ガン物質 N-ニトロソアミンの発生メカニズム


 畜肉や魚肉の主成分であるタンパク質は時間の経過とともに、タンパク質→アミノ酸→アミンへと変化していきます。そのアミンが酸性下(胃内)において亜硝酸と反応した場合に合成される、N-ニトロソアミンの発ガン性は現在確認されています。
 日本人は古来より近代までアミンに変化しやすいタンパク質である魚肉の干物と、亜硝酸を多量に含む野菜の漬物を同時に摂取してきたため、肉食の欧米人に比べ胃がんの発生率が高かったのも頷けます。
 野菜には多量の硝酸塩が含まれ(食物として摂取する硝酸塩の89.9%は野菜からです)、口腔内の硝酸還元菌により亜硝酸塩へと変化します。(食物として摂取する約93%が口腔内で硝酸塩から生成された亜硝酸塩です)

歩人の製品と野菜とに含まれる「亜硝酸根」の比較

食品衛生法基準値 0.07g/Kg
歩人のウィンナー 0.014g/Kg
歩人のロースハム 0.008g/Kg
歩人のバラベーコン 0.007g/Kg
野沢菜漬 2.17g/Kg
白菜 1.04g/Kg
サラダ菜 5.36g/Kg
キャベツ 0.435g/Kg

 日々、硝酸塩をふくむ野菜を摂取することにより体内では多量の亜硝酸塩が作られており、そこにアミンに変化しやすい魚肉や冷凍肉などの鮮度の良くない畜肉を摂取する場合、胃内において反応してN-ニトロソアミンが生成されています。

 結局、野菜類の硝酸塩を減らすこと(多量の施肥や育成期間の短縮のために使用される化学肥料のため、高硝酸塩野菜が出回っているため硝酸塩摂取量が増える傾向にある)が、N-ニトロソアミンの生成を防ぐ最大の対策であり、ひいては農業のありかたも改善していかなければならない広範囲な問題も孕んでいます。(化学肥料には多量は硝酸塩がふくまれているからです)

 「硝酸塩の大部分は野菜から摂取している」と言っても、食肉加工における硝酸塩・亜硝酸塩の使用が絶対的に安全なわけではなく、鮮度の悪い畜肉(タンパク質がアミンに移行している可能性のため)に亜硝酸が添加された場合はN-ニトロソアミンの生成も起こりえます。そのため歩人では、原料となる豚肉は屠殺場より直接仕入れ、入荷した日に塩漬を行い、アミンが生成される前には加熱処理を終わらせる為、お食事中に歩人の製品による胃内でのニトロソアミンの生成は皆無といえます。

 最後に、歩人の立場は添加物を擁護している業者ではなく添加物として加える硝酸塩・亜硝酸塩のみを弁明したにすぎないことをご理解ください。
 無添加こそプロの売り言葉になっているのは皮肉なことです。なぜなら硝酸・亜硝酸が無添加であることによって得られる利益は消費者に少なく、生産者にこそあるからです。


職人としての考察


 私は、添加物を1つ減らす為には、10の勉強と100の努力が必要だと考えています。
 無添加というブランドに消費者の方が飛びつくのも知っていますが、職人として自分に嘘をつくような仕事はしたくないと思っています。

 もちろん、亜硝酸にしてもその大切な働きを何らかの形で置き換える物が見つかれば、不必要と断定しますが、27年間考え続けた結果、現状では代わりになるものは無く、食肉加工品の製造には必要不可欠な物と確信しております。

 発色剤にかかわらず、添加物を1つ1つ使用しないための努力がなされているかを良く確かめていただきたいのです。薄汚れた作業場で作られている無添加は毒だといえます。ソーセージ特有の弾力や歯ざわりの無い、ひき肉に香辛料を混ぜたような腸詰をソーセージとは呼んでいただきたくないし、焼き豚に煙をかけただけの物をハムとは呼んでいただきたくないのです。

 どうか、安易な無添加製品に騙されること無く、本質を学び、安全でおいしい食品をお選びください。